甘くないピンク、という選択。クンツァイトが教えてくれる「大人の愛らしさ」
甘すぎない「ライラックピンク」が魅力のクンツァイト。大人の肌に透明感を与える色の秘密と、夜に輝く「イブニング・ストーン」としての楽しみ方をご紹介します。

「ピンク」という色に対して、少し身構えてしまう瞬間はありませんか。 若い頃はあんなに無邪気に手に取っていたのに、ある年齢を境に「今の私には、少し可愛すぎるかもしれない」と、躊躇してしまう。もし、あなたがそんな風にピンク色との距離感に迷っているなら、ぜひ出会ってほしい宝石があります。
それが、クンツァイトです。
この石が持っているのは、お菓子のような甘いピンクではありません。 例えるなら、初夏の夕暮れ時に一瞬だけ空に広がる、薄紫がかったライラックピンク。あるいは、よく冷えたロゼワインのような、清涼感のある色合いです。
「可愛い」という言葉よりも、「麗しい」という言葉が似合う。 今回は、そんな大人の女性にこそ似合う、クンツァイトの魅力についてお話しします。
凛とした「青み」が、甘さを中和する
ピンク色の宝石といえば、ふんわりと優しいローズクォーツや、鮮やかな発色のピンクサファイアなどが有名です。それらが「暖かみ」のあるピンクだとすれば、クンツァイトは「冷たさ」を含んだピンクだと言えるでしょう。
この石の最大の魅力は、その色の中に微かに混じる「青み(紫味)」にあります。 ただ甘いだけではなく、どこかクールで知的なニュアンスが漂っているのです。だからこそ、大人の女性が身につけても子供っぽくなりません。
また、クンツァイトは透明度が非常に高く、ガラスのような鋭い輝きを持っています。 甘い色味を、氷のような透明感がキリッと引き締める。この絶妙なバランスこそが、可愛らしさを卒業した私たちが求めていた「ちょうどいいピンク」の正体なのです。
肌を透き通らせる、ライラックのマジック
ジュエリーを選ぶとき、石そのものの美しさと同じくらい大切なのが「肌に乗せたときの見え方」ですよね。
年齢を重ねると、あまりに濃く鮮やかな色は、肌の色から浮いて見えてしまうことがあります。逆に、肌馴染みが良すぎると、今度はジュエリーの存在感がぼやけてしまうことも。
その点、クンツァイトの淡いライラックピンクはとても優秀です。 日本人の肌にスッと馴染みながらも、その高い透明感によって、手元やデコルテをワントーン明るく、透き通ったように見せてくれる効果があります。
白シャツやグレーのニットといった、大人のベーシックな装いに合わせてみてください。 無彩色のコーディネートに、クンツァイトの澄んだピンクがひとさじ加わるだけで、全体がふっと柔らかく、洗練された印象に変わります。「主張しすぎないけれど、確かにそこに品格がある」。そんな理想的なパートナーになってくれるはずです。
夜の灯りの下で目覚める「イブニング・ストーン」
クンツァイトには、もうひとつ素敵な呼び名があります。それは「イブニング・ストーン(夕べの宝石)」。
実はこの石、紫外線に長時間当たり続けると色が退色してしまう恐れがあるため、真昼の太陽の下での着用はあまり推奨されていません。その代わり、日が落ちてからの照明の下では、驚くほど美しく輝くという性質を持っています。
キャンドルの炎や、レストランの暖色系のライト。 そうした少し暗めの明かりの中で見ると、クンツァイトは内側からとろりとした光を放ち、昼間とは違う妖艶な表情を見せます。
太陽を避けて、夜にだけそっと身につける。 そんな少し秘密めいた使い方も、大人の余裕を感じさせて素敵だと思いませんか。ディナーや観劇など、特別な夜のお出かけに連れて行くには最高の宝石です。
儚さを愛でる、豊かな時間
美しいクンツァイトですが、付き合う上で少しだけ心得ておきたいことがあります。 それは、この石がとても繊細だということ。
硬度はそれなりにあるものの、特定の方向に割れやすい「 劈開(へきかい) 」という性質が強いため、ぶつけたり落としたりする衝撃には注意が必要です。 「手がかかる子ほど可愛い」とはよく言ったもので、この繊細ささえも、クンツァイトの気高さの一部だと私は思います。
帰宅したらすぐに外し、柔らかい布で優しく拭いて、光の当たらないジュエリーボックスで休ませる。 そんなふうに大切に扱うひと手間が、石への愛着を深め、慌ただしい日常の中に「ものを慈しむ」という豊かな時間を作ってくれます。
もう一度、ピンクを愛するために
「もうピンクは似合わない」なんて、諦める必要はありません。 ただ、選ぶべきピンクの色味が、少しだけ変わっただけのこと。
凛とした透明感と、知的なライラックカラー。 クンツァイトは、経験を重ねた今のあなただからこそ似合う、特別なピンクです。
もしジュエリーショップでこの石を見かけたら、ぜひ一度、肌に合わせてみてください。 甘すぎないその色が、あなたの中に眠る「大人の愛らしさ」を、もう一度呼び覚ましてくれるかもしれません。




