手の中にある小さな月明かり。シラーという「ゆらめき」について
ムーンストーンの表面に浮かぶ青白い光、シラー。その神秘的な輝きの理由と、角度によって表情を変える石の魅力を綴りました。手元にある月明かりの話です。

ふと夜空を見上げたとき、雲の切れ間から月が顔を出すと、なんだかホッとした気持ちになりませんか。あの静かで優しい光には、張り詰めた糸をふっと緩めてくれる不思議な力があるような気がします。
そんな「月の光」をそのまま カボションカット のドームの中に閉じ込めたような石、それがムーンストーンです。
ジュエリーショップのショーケースや写真でパッと見ただけだと、ただの乳白色の石に見えるかもしれません。でも、この石の本当の面白さは、手に取って少し角度を変えたときに現れます。石の表面を、とろりとした青や白の光がゆらゆらと滑っていく。まるで水面に月明かりが映り込んでいるような、あの幻想的な光です。
この光の現象は、専門用語で「シラー」や「アデュラレッセンス」と呼ばれています。
名前は少し難しいですが、仕組みは意外とロマンチック。ムーンストーンは、二種類の異なる鉱物が、極めて薄い層になって交互に重なり合ってできています。まるで、目に見えないほどの薄いベールが何千枚も重なったミルフィーユのようです。
そこに光が差し込むと、それぞれの層が光を反射したり、干渉し合ったりして、あの独特の「ボワッ」とした柔らかい輝きが生まれます。層が薄ければ薄いほど、青みがかった神秘的な光(ブルーシラー)になると言われています。
私が特にこの石を好きだなと思うのは、その光が「いつも見えているわけではない」というところ。
正面から見るとすりガラスのように静かなのに、ふとした瞬間に手首を動かしたり、首を傾げたりすると、ハッとするほど鮮やかな光が走る。その気まぐれさが、満ち欠けを繰り返す本物の月のようで、なんだか生きているみたいに感じられます。
あわただしい日常の中で、ちょっと疲れたなと感じたとき。指輪やペンダントのムーンストーンを光にかざして、その中で揺らめく青い光を目で追ってみてください。手の中に自分だけの月があると思うと、不思議と心が凪いでいくのがわかるはずです。
ギラギラとした強い輝きも素敵ですが、こういう「自分にだけそっと見せてくれる光」もまた、ジュエリーを持つ醍醐味だと思うのです。






