「溶けない氷」の記憶。クォーツが教えてくれる、静寂という温度
古代人が「溶けない氷」と信じたクォーツ。その透明な輝きとひんやりとした感触が、忙しい現代人の心を静かにクールダウンさせてくれる癒やしのエッセイです。

ふと、ジュエリーボックスの中にあるクォーツに触れてみたことはありますか? 指先に伝わる、ひんやりとしたあの感覚。実はあそこに、この石の物語が詰まっています。
まだ科学が発達していなかった遥か昔、古代ギリシャの人々は、山奥の洞窟で発見された透明なこの石を見て、本気でこう信じていたそうです。
「これは、神々が作った氷だ。あまりに長い時間をかけて固まったため、もう二度と溶けることのない永遠の氷になったのだ」と。
英語では「Crystal(クリスタル)」とも呼ばれますが、その語源はギリシャ語の「Krystallos(氷)」。私たちが普段使っている「クォーツ」という鉱物名も素敵ですが、この「氷の化石」という見立てには、なんだか胸をくすぐるロマンがありますよね。
でもこの話、ただの昔話として片付けるには、少し説得力がありすぎると思いませんか?
実際にクォーツを手に握ってみると、ガラス玉なんかよりもずっと冷たく感じます。これはクォーツの熱伝導率が高く、触れた瞬間にサッと体温を奪う性質があるから。
古代の人々もきっと、この透き通る石を額や頬に当てて、「なんて冷たくて気持ちいいんだろう」と涼をとっていたのかもしれません。
スマホの通知に追われたり、あふれる情報に頭がいっぱいになったりして、知らず知らずのうちに「オーバーヒート」気味になっている現代の私たち。そんな時、クォーツのこの「冷たさ」は、意外なほど心地よい特効薬になります。
ペンダントトップやリングに留められたクォーツを、そっと指で撫でてみる。 あるいは、何の色も持たない透明なその奥を、ただじっと覗き込んでみる。
そうすると、騒がしかった心が、氷水に浸したようにシーンと静まっていくのがわかるはずです。
「何色にも染まらない」ということは、裏を返せば「すべてを受け入れてくれる」ということ。
もし、日々の熱量に少し疲れてしまったら、この「溶けない氷」に触れてみてください。クォーツの持つ静寂という温度が、高ぶった神経を優しくクールダウンしてくれるはずです。



