世界で一番小さな採掘者。「アリ」が運んでくるガーネットの話
まさか、アリが宝石を採掘するなんて!アリゾナの砂漠で、小さな働き者たちが巣の外へ運び出す不思議な「アントヒル・ガーネット」。世界一ユニークな採掘の裏側をご紹介します。

宝石を採掘する現場と聞いて、どんな光景を思い浮かべますか?
大きなショベルカーが唸りを上げて地面を掘り返したり、ヘルメットを被った屈強な男性たちがツルハシを振るっていたり……。きっと、そんな力強い光景をイメージする方が多いと思います。
でも、世界には人間が掘るのではなく、「アリ(蟻)」がせっせと地上へ運んでくれる不思議なガーネットがあるのをご存知でしょうか。
その名もズバリ、「アントヒル・ガーネット(Ant Hill Garnet/アリ塚のガーネット)」です。
舞台は、アメリカ・アリゾナ州の砂漠地帯。 ここの地中には、非常に美しいガーネットの層が眠っています。そして、その地面の上には、クロオオアリたちが大きな巣(アリ塚)を作って暮らしています。
彼らが地下深くに自分たちの都市=巣を広げようとトンネルを掘り進めるとき、どうしても邪魔になるものがあります。それが、通り道にある小さな「石」たちです。
砂粒なら簡単に退かせますが、少し大きくて硬いガーネットの結晶は、彼らにとってはただの「厄介な障害物」でしかありません。
「ここにあると邪魔なんだよな」 「じゃあ、外に出しちゃおうぜ」
そんな会話が聞こえてきそうなほど手際よく、彼らはその赤い石をくわえ、長いトンネルを登り、地上の入り口付近に「ポイッ」と捨てていきます。
これを繰り返すうちに、アリの巣の周りには、キラキラと輝く赤い石が自然と積み上がっていくのです。 人間たちは、雨が降って石が綺麗に洗われた頃を見計らって、その「ゴミ捨て場」からありがたく宝石を拾わせてもらう……というわけなんですね。
もちろん、アリが運べるサイズなので、採れる結晶は1カラット未満のとても小さなものがほとんどです。
けれど、この「アントヒル・ガーネット」は、小さい代わりに驚くほど色が濃く、透明度が高いことで知られています。「クロムパイロープ」と呼ばれる種類で、まるで最上級のルビーのような、鮮烈な赤色をしているのです。
もし、ジュエリーショップでとても小さくて、目が覚めるほど赤いガーネットを見つけたら、それはもしかするとアリゾナの小さな採掘者たちが運んでくれた一粒かもしれません。
重機もダイナマイトも使わず、自然の営みの中でひょっこり地上に現れた宝石。 そう思うと、その小さな一粒がなんだかとても愛おしく、特別な贈り物のように思えてきませんか?






