DiamondJanuary 20, 2026

オークションで「億越え」する石の共通点

オークションで数億円の値がつく宝石の共通点とは?ファンシービビッドやピジョンブラッドなど、地球が育んだ奇跡の輝きと、そこに秘められた深いロマンに迫ります。

オークションで「億越え」する石の共通点

サザビーズやクリスティーズ。その名前を聞くだけで、どこか遠い世界の華やかな舞踏会を想像してしまいます。

煌びやかなライトの下、静かに鎮座する一粒の宝石。競売人の小槌が「バン!」と鳴り響いた瞬間、数億円、時には数十億円という価格が決まる。それは単なる取引というよりも、ある種の儀式のようです。

私たちの日常とはかけ離れた金額ですが、コレクターたちがそれほどまでに熱狂し、愛してやまないのには理由があります。今日は、そんな「億越え」の宝石たちが秘めている、数字には換算できないロマンと共通点についてお話しさせてください。

地球が描いた色彩の奇跡

まず、宝石の王様ダイヤモンド。婚約指輪で見るような無色透明な輝きも神聖で美しいですが、オークション会場で主役の座をさらうのは、強烈な色彩を宿した「カラーダイヤモンド」たちです。

中でも「ファンシービビッド(Fancy Vivid)」と呼ばれる等級の石は、まさに地球が生んだ奇跡のアート。

例えば、桜の花びらをさらに濃く、鮮烈にしたようなピンクダイヤモンド。2020年にオーストラリアの アーガイル鉱山 がその歴史に幕を閉じて以来、この色は「失われた遺産」になりつつあります。あるいは、深海をそのまま閉じ込めたようなブルーダイヤモンド。

これらは、何億年もの時の中で、偶然に偶然が重なって生まれた色です。「ビビッド」という称号は、単に色が濃いということ以上の意味を持ちます。それは、人間がどんなに絵の具を混ぜても再現できない、自然界だけが許された「命の色」なんですね。その圧倒的なエネルギーを前にしたとき、人は理屈を超えて心を奪われてしまうのです。

ピジョンブラッド 」という情熱の赤

次にご紹介したいのが、色石の世界の女王、ルビーです。その中でも最高峰とされるのが「ピジョンブラッド(鳩の血)」と呼ばれる色味。

少しドキッとする名前ですが、これはミャンマーの鉱山から産出される、わずかに青みを含んだ、燃えるような深紅を指します。まるで石そのものが鼓動しているかのような、妖艶な赤です。

しかし、億を超えるルビーにはもう一つ、譲れない条件があります。それは「人の手が加わっていない」こと。市場に出回る多くのルビーは、その美しさを引き出すために 加熱処理 が施されていますが、最高級の石は「 非加熱(ノーヒート) 」のまま、あの鮮烈な輝きを放っているのです。

地中から掘り出された瞬間から、完璧な美しさを持っていた。お化粧をせずとも世界を魅了するその姿に、コレクターたちは「純粋無垢な自然の力」を見出し、惜しみない賞賛(と莫大な金額)を贈るわけです。

悠久の時を所有するということ

こうして見ていくと、億越えする石の共通点は「唯一無二の物語」にあることがわかります。

工業製品とは違い、宝石は地球のかけらです。 「ファンシービビッド」のダイヤモンドも、「非加熱のピジョンブラッド」も、悠久の時を経て、今、目の前にあること自体が奇跡に近い確率なんですね。

オークションで高値がつくのは、単に希少だからというだけではありません。「この石とは、今ここで逃したら二度と巡り合えないかもしれない」という運命的な引力。そして、地球が何億年もかけて育んだ結晶を、自分の手で守り継いでいきたいという想い。

そう考えると、あの天文学的な落札価格も、地球の歴史への敬意の表れのように思えてきませんか?

もちろん、私たちが普段身につけるジュエリーにも、それぞれの素敵な物語があります。もしお手元の宝石箱を開ける機会があれば、ぜひその石がどんな旅をしてあなたの元へ来たのか、想いを馳せてみてください。きっと、今まで以上に愛おしく輝いて見えるはずですよ。

月野 結絵(Tsukino Yue)
Written by

月野 結絵(Tsukino Yue)

ジュエリーの魅力を言葉で磨くライター。天然石の美しさやコーディネートの楽しさを、瑞々しい感性でお伝えします。現在、宝石学やトレンドを勉強中。Jewelism Marketを通じて、皆様と素敵なジュエリーとの「結び目」になれるような記事をお届けします。

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