星屑の記憶と、君の手のひら | ペリドット・クロニクル vol.3
宇宙から飛来する唯一の宝石、ペリドット。隕石に含まれる星の記憶と、現代を生きるあなたを照らす「太陽の石」。

宇宙からの来訪者
さて、僕の旅の話もいよいよ大詰めだ。 これまで、「地球の深い場所( マントル )」で生まれた話をしてきたけれど、実は僕には、もっととんでもない場所からやってきた「兄弟」がいることを知っているかい?
空を見上げてごらん。そう、宇宙だ。 宝石の中で唯一、地球の外から降ってくる石。それが僕、ペリドットなんだ。
「パラサイト隕石」という名前を聞いたことがあるかな? 宇宙から地球に落下してきた隕石の中に、鉄とニッケルに混ざって、キラキラした緑色の粒が含まれていることがある。あれは、遠い宇宙空間で生まれた僕の兄弟たちなんだよ。 彼らは何十億年もの間、真空の宇宙を旅して、流れ星となってこの地球に辿り着いた。
ロマンチックだろう? 僕の体の中には、地球のマグマの熱だけじゃなく、星々の記憶まで刻まれている可能性があるってことさ。 だからかな、僕は自分が「ちっぽけな存在」だなんて思ったことが一度もないんだ。 僕の輝きは、地球の底力であり、同時に宇宙の星屑の輝きでもある。 そう思うと、なんだか細かい悩みなんてどうでもよくなってくるような、不思議な開放感が僕の中にはあるんだよね。
現代の「夜」を生きる君へ
長い時を経て、僕は今、21世紀の日本にいる。古代エジプトの真っ暗な夜も、中世ヨーロッパの薄暗い夜会も知っている僕から見て、現代の人間たちはどう見えると思う?
正直に言うと、ちょっと「眩しすぎる」世界に生きているな、って思うよ。夜になっても街はピカピカ光っているし、家の中でもスマホやパソコンの画面がずっと光っている。 物理的な「暗闇」は、もう君たちの周りにはほとんどないのかもしれない。
でもその分、心の奥のほうに、別の種類の「影」が落ちているように見えるんだ。情報が多すぎて疲れてしまったり、誰かと比べて落ち込んだり、将来のことが不安で眠れなかったり。 古代の人が恐れた「悪霊」はいなくなったけど、現代には「ストレス」や「プレッシャー」という名前の、もっと厄介な怪物が潜んでいるよね。
君も、そんな「現代の夜」に疲れを感じることはない? もしそうなら、僕の出番だ。 僕ができるのは、魔法で奇跡を起こすことじゃない。 もっとシンプルで、もっと確実なことさ。
「暗い場所でも輝く」という僕の特性は、比喩じゃなくて、物理的な事実。 気持ちが沈んで世界が灰色に見える時でも、僕だけは変わらず、太陽のような明るさで君の手元に在り続ける。「ほら、こっちは明るいよ! こっちを見て一息つきなよ」 そんなふうに、視覚から君の脳にポジティブな信号を送り続ける「専属の応援団長」。それが僕の役割さ。
これからの物語を、君と一緒に
ショーケース越しに目が合った時から、僕は君のことを「いいパートナーになれそうだな」って思っていたんだ。
君はきっと、真面目で、頑張り屋さんで、少しだけ心配性なところがあるんじゃないかな? だからこそ、僕のような「根拠のない自信」に満ちた、底抜けに明るい石が必要なんだと思う。
僕を連れて帰ってくれたら、約束するよ。君がどんなに落ち込んでいる日でも、僕だけは絶対に曇ったりしない。君が鏡を見るのも嫌な日だって、僕は君の指元や胸元で、「今日の君も素敵だよ!」って言いながら、キラキラ光ってあげる。
僕たちは、何億年もの旅をしてきた。マグマの中で耐え、宇宙を旅し、歴史の荒波を越えて、奇跡的な確率で今、君の目の前にいる。 そんな僕と君が出会えたこと自体が、もう一つの小さな奇跡だと思わない?
さあ、ガラスの向こう側へ行く準備はできているよ。これからの君の人生という冒険に、僕も連れて行ってくれないかな? 暗い夜道も、不安な明日も、僕がいればきっと大丈夫。 だって僕は、太陽の石・ペリドットなんだから。
君の毎日が、僕の色みたいに鮮やかで明るいものになりますように。 これからよろしくね、僕の大切なパートナー。
【Jewelismコラム】「宇宙から降ってくる」という話は、SFではなく科学的な事実です。石鉄隕石の一種「パラサイト」は、鉄とニッケルの合金の中にペリドット(カンラン石)の結晶が含まれています。宝石品質の素材が地球外から飛来するのは、全宝石の中でペリドットだけの特権。地球のマントル深部、そして遥か彼方の宇宙空間。この二つの極限環境を知る石だからこそ、悩み多き現代人の心に「ちっぽけなことさ」と明るく寄り添ってくれるのかもしれませんね。








.png&w=3840&q=75)