GarnetMay 8, 2026

ラウンドだけじゃない。マーキスやペアシェイプが教えてくれる新しい表情

ラウンドカット以外の宝石に挑戦してみませんか?マーキスやペアシェイプの魅力と、相性抜群な宝石、日常の装いに馴染む取り入れ方をお伝えします。

ラウンドだけじゃない。マーキスやペアシェイプが教えてくれる新しい表情

見慣れた丸い石から、少しだけ冒険してみる

ジュエリーボックスを開いたとき、そこに並んでいるのはどんな形の石でしょうか。おそらく、多くの方が「ラウンド」と呼ばれる丸い形の石を思い浮かべると思います。ダイヤモンドの輝きを最大限に引き出すために計算されたラウンドブリリアントカットは、確かに美しく、どんな服装にも合わせやすい万能な存在です。

でも、いつも同じ形ばかりだと、少しだけ気分を変えたくなる日はありませんか。お洋服のシルエットをがらりと変えるように、ジュエリーの石の形を変えるだけで、全体の印象は驚くほど新鮮になります。

ジュエリーの世界では、丸以外の形のことを総称して「ファンシーカット」と呼びます。四角やハートなどさまざまな種類がありますが、今回は大人の女性の日常にすっと寄り添ってくれる、二つの形についてお話しさせてください。

指先をすっきりと見せてくれる、 マーキスカット の魔法

一つ目は、両端がツンと尖った小舟のような形をした「マーキスカット」です。この少し変わった名前は、18世紀のフランスに実在したポンパドール夫人という女性の称号(マーキス=侯爵)に由来していると言われています。彼女の美しい微笑みの口元を写し取って作られた、というロマンチックな逸話も残っているんですよ。

この形、実際に指輪として身に着けてみると、その良さがとてもよくわかります。縦に長いシルエットが指のラインに沿うため、視覚的な錯覚で指全体をすっきりと長く見せてくれるんです。丸い石だと少し可愛らしくなりすぎると感じる方でも、マーキスカットなら凛としたシャープな雰囲気を纏うことができます。

マーキスカットで選ぶなら、植物の息吹を感じる石を

このシャープで細長いシルエットは、自然界にある「葉」の形にとてもよく似ています。そのため、グリーン系のカラーストーンと合わせると、まるで本物の植物を身に纏っているような、生き生きとした美しさが生まれます。

特におすすめなのが、ツァボライト(グリーンガーネット)や、グリーントルマリンです。深みのある緑色の石をマーキスカットにしてリングやペンダントに仕立てると、肌の上に一枚の葉がふわりと舞い降りたような、とてもポエティックな表情を見せてくれます。

また、硬度の高いサファイアもマーキスカットと好相性です。マーキスの両端の尖った部分は物理的に少し欠けやすい性質があるのですが、ダイヤモンドの次に硬いサファイアなら、日常使いでも比較的安心です。深いブルーや鮮やかなピンクなど、サファイアならではの強い色が、凛としたカットによってさらに引き締まって見えます。

しずくが落ちる瞬間を捉えたような、 ペアシェイプ のみずみずしさ

二つ目は、「ペアシェイプ」と呼ばれる形です。ペアとは洋梨のことで、片側が丸く、もう片側が尖った、いわゆる「しずく型」や「ティアドロップ」と呼ばれるシルエットですね。

先端の尖った部分と、ふっくらとした丸みの両方を持ち合わせているので、着ける向きによって表情が変わるのが面白いところです。たとえば指輪なら、尖った方を指先に向けると指が細く見え、逆に向けると少しカジュアルで落ち着いた印象になります。

滴り落ちる「水」の美しさを体現する宝石たち

ペアシェイプといえば、やはりあの水滴のようなフォルムが最大の魅力。ですから、水や透き通った空気を連想させる宝石とは言うまでもなく相性抜群です。

その筆頭とも言えるのが、アクアマリンです。透明感のある水色の石をペアシェイプにカットすると、朝露のしずくをそのまま宝石に閉じ込めたかのようなみずみずしさに見とれてしまいます。少し長めのチェーンで胸元に下げると、本当に水滴が滴り落ちる瞬間のようで、ハッとするほど綺麗なんです。

もうひとつ、ペアシェイプのふっくらとした曲線の美しさを際立たせてくれるのが、モルガナイトのような肌なじみの良いピーチピンクの石です。ペアシェイプの優しい丸みと、温かみのあるパステルカラーが合わさることで、大人の女性の肌にすっと溶け込むような、柔らかくエレガントな雰囲気を演出してくれます。

ファンシーカットを取り入れる、ちょっとしたコツ

「ちょっと個性的で合わせにくいのでは?」と感じる方もいるかもしれませんが、実はそんなことはありません。いつもの装いに自然に取り入れるコツは、石を支える枠(セッティング)のデザインを極力シンプルなものにすることです。

例えば、石を周りを金属でぐるりと囲む「覆輪(ふくりん)留め」なら、引っかかりも少なく、日常使いにぴったりです。マーキスやペアシェイプの個性的なシルエットがくっきりと浮かび上がり、まるでアートピースのようなモダンな雰囲気を楽しめます。

また、すでにお持ちのラウンドカットのジュエリーと重ね着けするのもおすすめです。丸い石の隣に、スッと細長いマーキスやしずく型のペアシェイプが並ぶことで、お互いの形を引き立て合い、手元に心地よいリズムが生まれます。

石の形が変われば、新しい自分に出会えるかも

宝石の魅力は、色や輝きだけではありません。その石がどんな形にカットされているかによって、身に着ける人に与えてくれる印象は大きく変わります。

次にジュエリーを探すときは、ぜひ「形」にも少しだけこだわってみてください。ショーケースの中でひっそりと輝くファンシーカットの石たちが、今まで気づかなかったあなたの新しい表情を引き出してくれるかもしれません。ラウンドカットの安心感も素敵ですが、時には違う形の石に手を伸ばしてみるのも、大人ならではのジュエリーの楽しみ方ではないでしょうか。

月野 結絵(Tsukino Yue)
Written by

月野 結絵(Tsukino Yue)

ジュエリーの魅力を言葉で磨くライター。天然石の美しさやコーディネートの楽しさを、瑞々しい感性でお伝えします。現在、宝石学やトレンドを勉強中。Jewelism Marketを通じて、皆様と素敵なジュエリーとの「結び目」になれるような記事をお届けします。

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