実は世界最古? 日本の石「糸魚川翡翠」のロマン
日本の国石「糸魚川翡翠」。実は世界最古の翡翠文化は縄文時代の日本にありました。意外な歴史と、海岸で出会えるかもしれない身近な宝石のロマンに迫ります。

翡翠(ヒスイ)と聞くと、なんとなく中国の歴史ドラマに出てくるような、高貴な緑色の石をイメージしませんか? 西太后が愛した宝石、なんて話も有名ですから、どうしても「翡翠=中国」という印象が強いですよね。
でも実は、人類がはじめて翡翠を「特別な石」として扱い、加工し始めたのは、ここ日本だと言われています。それも、今からおよそ7000年も前の縄文時代のこと。エジプトのピラミッドができるずっと前から、私たちの祖先はこの石の美しさに気づいていたことになります。なんだか急に、この石が身近に感じられてきませんか?
舞台となるのは、新潟県の 糸魚川 (いといがわ)です。
縄文時代の人たちは、鉄の道具なんて持っていませんでした。それなのに、ダイヤモンドの次に割れにくいと言われるほど強靭なこの石を、砂と水、そして根気だけで削り上げ、勾玉(まがたま)や大珠(たいしゅ)といった装身具に仕上げていました。北海道から沖縄まで、日本の遺跡から糸魚川産の翡翠が見つかっていることからも、当時の人たちがどれほどこの「緑色の石」に熱狂し、大切に交易していたかがわかります。
そして、この糸魚川翡翠の面白いところは、博物館のガラスケースの中だけの話ではない、という点です。
現在、山側の産地は国の天然記念物に指定されているため、石を持ち出すことは一切禁止されています。けれど、川から海へと流れ出た石なら話は別。糸魚川の海岸、通称「ヒスイ海岸」では、波打ち際で宝石拾いができるんです。
実際に海岸を歩いてみるとわかりますが、これがなかなか難しい。翡翠は 比重 が重いので、普通の石とは違う「ゴトッ」という重低音を立てて波に洗われていると言われますが、素人目には白い石ころとの区別がつきにくいんです。地元では、翡翠に似ているけれど違う石のことを「キツネ石」なんて呼んだりします。まさに、狐につままれたような気分になるからでしょうね。
それでも、波の音を聞きながら、足元の石ひとつひとつに目を凝らす時間は贅沢なものです。もし運良く本物の翡翠を拾えたら、それは何千年もかけて山から旅をしてきた、地球のかけらそのもの。
2016年、翡翠は正式に「日本の国石」に選ばれました。桜やキジと同じように、日本を象徴する存在になったわけです。
遠い国の鉱山から掘り出された宝石も素敵ですが、私たちが暮らすこの日本の大地が育み、縄文の昔から愛されてきた石。そんな「糸魚川翡翠」を、ジュエリーとして身につけてみる。それは単なるファッションを超えて、長い長い時間の物語を身にまとうような、ちょっと特別な体験になるはずです。
次に翡翠を見かけたときは、ぜひその奥にある「日本の記憶」を感じてみてください。



