繊細な僕(タンザナイト)と、夕暮れを愛する君へ | キリマンジャロの夕暮れ、青と紫の狭間で見る夢 vol.3
硬度が低く、傷つきやすいタンザナイト。けれど、限りある資源である「一世代限りの宝石」としての運命。強さだけが全てではない現代で、心の機微に寄り添うパートナーとして、僕が君に伝えたいこと。

華やかなデビューの話をしてきたけれど、僕には弱点もある。正直に話しておこうかな。 ダイヤモンドのような「永遠の輝き」や、ルビーのような「不屈の硬さ」を僕に求めると、君をがっかりさせてしまうかもしれない。
僕の硬度は、宝石の中では決して高くないんだ。 モース硬度 で言うと6から7くらい。硬貨で強くこすれば傷つくし、何より「劈開(へき開)」という性質を持っている。これは、ある特定の方向からの衝撃に弱くて、パカッと割れやすいという性質なんだ。 だから、超音波洗浄機に入れられたり、硬い床に落とされたりするのは本当に怖い。僕は、丁寧に、優しく扱われる必要があるんだ。
「手がかかるなあ」って思った? でもね、その繊細さこそが、僕がいとおしまれる理由でもあると思うんだ。 傷つかない最強の心も素敵だけど、痛みを知っていて、少しの衝撃にも敏感に反応してしまう繊細な心も、また美しいと思わないかい? 現代を生きる君たちだって、いつも強くあり続けるのは疲れるだろう。 そんな時、ふと手元を見て、僕の深く静かな青色と目が合う。 「大丈夫、無理しなくていいよ」 僕の光は、そう語りかけているように感じないかな。
それに、僕と一緒にいられる時間は、人類の歴史から見ればほんの一瞬かもしれない。 僕が採れるメレラニ鉱山は、非常に狭いエリアなんだ。地質学者たちの予測では、あと数十年で枯渇してしまうと言われている。「一世代限りの宝石」——それが僕につけられた、もう一つのあだ名さ。 お婆ちゃんから孫へ、そのまた孫へと受け継がれるダイヤモンドとは違って、僕と君が出会えたことは、まさに「今、この時代」だけの奇跡なんだよ。
2002年、僕は正式に「12月の 誕生石 」に加えられた。 ラピスラズリやトルコ石といった先輩たちと並んでね。 12月といえば、一年の終わり。夕暮れが早く訪れ、夜が長い季節だ。 慌ただしい一年の終わりに、ふと立ち止まって過去を振り返る。そんな静寂な時間に、僕の色はよく似合う。 青から紫へ移ろう僕の色は、人生の「変化」や「過渡期」を肯定する色だ。 若い頃の真っ直ぐな青い情熱もいいけれど、経験を重ねて、喜びも悲しみも知った後に滲み出る、紫がかった深みのある人生。僕はそんな大人の心に寄り添いたいと思っている。
もし君が、完璧な強さよりも、移ろいゆくものの美しさを愛する人なら。 あるいは、言葉にできない複雑な感情を大切にしている人なら。 僕はきっと、君にとって最高のパートナーになれるはずだ。 キリマンジャロの夕暮れを閉じ込めたこの小さな石の中に、君自身の物語を重ねてみてほしい。 さあ、これからの人生、僕と一緒に、もっと深い色を探しに行こうか。
【Jewelismコラム】タンザナイトは、鉱物学的特性として「劈開(へき開)」を一つ持っています。これは一方向に割れやすい性質を指すため、リングとして日常的に使用する場合は、衝撃を与えないよう注意が必要です(ペンダントやピアスなど、衝撃の少ないアイテムが推奨されることもあります)。 また、 タンザニア のメレラニ鉱山は採掘エリアが極めて限定的であり(約14平方キロメートル)、埋蔵量には限りがあります。そのため、将来的には枯渇し、新たな供給がストップする可能性が高い「希少石」として、年々その資産価値や注目度は高まっています。12月の誕生石に追加された背景には、その美しさと共に、こうした希少性と話題性も影響しています。







